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埼玉県健康づくり安心基金の創設と廃止~【後編】地方たばこ税の目的税化の是非~

埼玉県健康づくり安心基金の使途

埼玉県健康づくり安心基金の創設と廃止~【前編】地方たばこ税の目的税化の是非~
で記述したとおり、埼玉県は埼玉県健康づくり安心基金(以下、基金と略す)の一部を受動喫煙対策に充てるとしていました。
そこで、埼玉県に開示請求した公文書から、「たばこ対策関連施策」として実施された事業内容を検討することにしました。

保健所設置市を除く県内保健所が提出する受動喫煙防止対策促進事業実施実績報告書から、「たばこ対策関連施策」に該当する主たる事業内容を確認しました。
事業は主として、「研修会」「周知啓発」「相談・通報対応」で、基金の一年度の予算額(約3億7千万円)のうち、 令和2年度から令和5年度における受動喫煙防止対策促進事業の割合は、おおよそ3.2%~3.7%(約120万円~約140万円)で推移していました。
いちばん大掛かりな事業は、2023年度に県保健医療部健康長寿課が約345万円を充当したとみられる動画『なくそう!望まない受動喫煙』作成で、

www.youtube.com

【15秒版】

www.youtube.com【30秒版】

www.youtube.com【60秒版】

を2024年3月26日にYouTube埼玉県公式チャンネル(チャンネル登録者数2万5500人)で公開しています。

本年11月29日(土)・30日(日)に開催された第19回日本禁煙学会学術総会での発表のため、9月10日に確認した再生回数は約1200回に留まっていました。しかし、本日(12月21日)再確認したところ、少々信じ難いのですが15秒版の再生回数が、なんと、47万回に激増していました。

 

屋外喫煙所は果たして「受動喫煙をブロックする」のか

一方、前述の知事記者会見中の「受動喫煙をブロックする」事業として、県は埼玉県受動喫煙防止対策実施施設等認証制度(区域認証)を申請し交付条件を満たした県内の市町村に対し、屋外喫煙所の設置経費の一部を補助金として基金から交付しました。つまり、タバコを吸うための施設である喫煙所を県が「受動喫煙防止対策実施施設」として認証し、補助金を交付していたのです。

県が開示した文書から、川越市・吉川町・久喜市に各400万円の補助金が交付され、喫煙所の設置に充てられていたことがわかりました。

川越駅西口喫煙所

 

吉川美南駅前公園喫煙所

ここでお詫びしなければならないのは、私が11月に入り病気になってしまい、川越市と吉川町の喫煙所の現地取材ができず、状況把握をGoogleマップに頼ったことです。
メールでの事前のやりとりで、川越市からは「健康増進法の改正に伴い、パーテーションを設置するなど、自治体としての対応を求められている状況で、かつ同年オリンピック競技大会開催にあたり、分煙施設を整備し、望まない受動喫煙の防止を推進するため」に川越駅西口喫煙所に対し補助金を申請した旨を知らされていました。

久喜駅東口喫煙所

 

久喜市の担当者からは、「県から補助金を積極的に活用するよう案内があった」と電話で聞いていました。久喜市は、久喜駅東口喫煙所の新設(詳細には、元あった場所の喫煙所を廃止し、場所を移して新設)に当たり、総事業費679万8千円のうち400万円の補助金の交付を受けています。

久喜駅東口喫煙所設置工事の様子(2022.1.27撮影)


久喜市は「新設した指定喫煙所は厚生労働省の屋外分煙施設の留意事項の基準を満たしている」と説明しています。
しかし、仕様があまりにも杜撰だった前の指定喫煙所に比べて受動喫煙が軽減されたとはいえ、風向きでタバコ臭が流れることがあり、上田清司前知事が記者会見で語ったように「受動喫煙をブロックする」には至っていません。

 

喫煙所は受動喫煙を防止する施設ではなく、喫煙する場所

県たばこ税の一部を運用し健康づくりを標榜して創設した基金で、タバコを吸わせる施設である喫煙所の設置に対し補助金を交付することについて、県民の健康と保健衛生を担う健康長寿課は戸惑ったり苦悩したりしたのかもしれません。しかし、既に退任を決めていた上田前知事が、東京オリンピックパラリンピックを見据え、健康増進法の改正に合わせて自身の花道を飾る事業として創設した基金により、健康長寿課は喫煙所の設置に加担することになってしまったのです。

兵庫県では、第4次兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会の事務局である健康増進課が、委員会の席で
「 公共、公衆喫煙所の整備については要望をいただくこともありますが、県が喫煙する場所を作って増やしていくということは、政策として取り組んでいくには非常 に厳しいところがあります。公共というところが公的なところにも関係してきますので、検討委員会の中でもご要望、ご意見が出てくるかもしれませんが、県として 喫煙所を作っていくという方向に舵を切ることは、今は難しい状況です。」
と、明言しています。

 

健康づくりに喫煙が必要?

この成果を、第19回日本禁煙学会学術総会の一般演題7で発表したところ、
「こんなことが起きていたなんて知らなかったので、かなりの衝撃です」
と、県内の病院の禁煙外来で熱心に診療され、その自治体の禁煙化に主導的な役割を果たされている医師からコメントを頂戴しました。その医師は、その自治体の議員から
「先生、禁煙外来でみんなが禁煙しちゃったら、たばこ税が入ってこなくなるから困る」
というようなことを言われたことがあり、
「その時、自治体にとってたばこ税とはそれほど大事なものなのか!と感じた」
ということを、ご自身の発表の中で話されていました。

受動喫煙防止の名目で喫煙所設置の補助金にも基金を活用した埼玉県の施策は、自由民主党公明党令和2年度税制改正大綱の地方たばこ税の活用促進、ひいては令和6年4月1日総務省通知「屋外分煙施設の整備について(中略)地方たばこ税の活用」の先鞭をつけたともいえると考えます。
これはあくまでも疑念に留まりますが、喫煙所に地方たばこ税を活用する試験運用を埼玉県で行った可能性も無きにしも非ずかと思います。
自治体が地方たばこ税目的税化して健康増進や受動喫煙対策などの「よいこと」に活用すれば、前述の記者会見での知事の言にもあるように、喫煙が「貢献」にすり替わってしまいます。
タバコを安定的な財源確保のための財政物資と政府が位置づけている状態で自治体が地方たばこ税目的税化して活用することは、埼玉県の事例においては地方自治法と矛盾する論理的誤謬であると考えます。

さすがに、「健康づくりもしくは健康を害しないためには、喫煙が必要」という論理が誤謬であることは、誰しもが気づくのではないかと思います。