喫煙を考える

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文化財を火災から守れ! ~小野市が浄土寺周辺での火の使用を制限~

昨年11月、かねてからの念願であった兵庫県小野市の浄土寺を訪れることができました。
浄土寺は、平安時代末期の平氏による南都焼き討ちで焼失した東大寺再興の
大勧進だった俊乗房重源(しゅんちょうぼうちょうげん)所縁のお寺です。

創建当時の姿を残す浄土堂(阿弥陀堂)には、快慶作の阿弥陀三尊像が安置されています。


こちらの浄土寺の境内は、火災予防上危険な物品を持ち込んではならない場所として
小野市火災予防条例の指定を受けていました。
私が訪問した時も、境内で喫煙する人は誰もいませんでしたが
浄土寺参道脇にある公衆トイレ前に丸椅子が並べられ
上部が取り除かれている1斗缶が置かれていました。

壁には"Smoking Area”を表す紙が貼られています。
ここで喫煙が行われていた場合、受動喫煙で体調悪化を起こす私は
トイレを利用することも、自動販売機で飲み物を買うこともできなくなってしまいます。
ほかにも、棟を同じくする場所にベンチが置かれて休憩スペースになっていたことや
併設のレストランの入り口に向かってタバコの煙が流れることから
小野市に灰皿撤去を要望したところ、灰皿は撤去されました。


灰皿撤去の要望とともに出したのが、浄土寺境内だけでなく
駐車場等を含めた付近一帯を禁煙区域として指定することでした。

こちらも市(消防長)の英断で、小野市火災予防条例に基づき
タバコを含む火の使用等を禁止する区域に、境内を取り囲む道路が新たに指定され
2018年1月26日から施行されたと、先日小野市に確認しました。


現在に至るまで、多くの文化財が火災によって失われてきました。
とくに人々の記憶に残っているのは
法隆寺金堂の火事における壁画の焼失や、教王護国寺境内で開催されている弘法市において
火の不始末により食堂が焼失し四天王像が著しい損傷を受けたことなどが挙げられます。
火災による文化遺産の焼失は、多大なる文化的損害であるばかりか
人々の心にも計り知れない喪失感を与えました。
出火原因はさまざまですが、人為的な火気使用による出火を防ぐには
タバコを含めた火気の使用制限が有効です。
それをきちんと理解し、市条例を運用している小野市のこのたびの決断は
天晴れと言うしかないでしょう。


日が傾く時間の浄土寺浄土堂は
重源と快慶が力を合わせて作り上げた「この世の浄土」です。
私が最も感動したのは、浄土堂内には一般寺院にあるような内陣がなく
参拝者は段差のない板張りの堂内で、皆思い思いに好きな場所で
同じ視座から仏様を見つめます。
内陣に入れる僧侶、特別な参拝者だけが座ることを許される椅子などはありません。
この浄土堂こそが、重源が目指した、人々が遍く救われる浄土の姿であり
政治的腐敗と戦乱によってこの世が地獄同然であり
厳然とした身分の差があった平安末期から鎌倉時代初期に
重源と快慶によって創出された平等空間、「この世の浄土」なのです。
光に包まれ輝きを増す阿弥陀三尊の姿は、まさにご来迎を感じさせます。
皆さん、ぜひ小野市を訪れて、浄土寺浄土堂で光の演出を体験してみてください。
小野市は、文化財を有する施設での火気使用を制限し
環境タバコ煙のない環境を整えることで
重源と快慶の志を後世に伝え、受動喫煙という障壁を取り除き
誰もが安心して浄土寺を訪れることができるよう、整備しています。
文化財行政に携わる方が小野市の施策を参考にし、これに続いてほしいと願っています。